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要注意です!インボイス制度と不動産オーナーの対応

カテゴリー:賃貸 2022年6月23日

インボイス制度の概要


 まずは消費税の計算構造のご説明をします。事業者が国に納付すべき消費税の額は、預かった消費税から支払った消費税を差引いて計算します。つまり、支払った消費税が多いと納付すべき消費税額が少なくなり、支払った消費税が少ないと納付すべき消費税額が多くなります。消費税を納める事業者にとって、経費などの支払金額に消費税が含まれているかどうかが、納税額に大きな影響を与えることになります。


消費税の基本的な計算式
受け取った消費税 − 支払った消費税 = 消費税の納税額


 インボイス制度が導入されると、この支払った消費税と認識するには、支払いを受ける者がインボイスという書類を発行しなければなりません。そしてこのインボイスは一定の登録をした課税事業者でしか発行できないことになります。つまり、免税事業者に支払いをしたとしてもインボイス制度導入前のように、支払った消費税に算定できないということになります。

インボイス制度の目的


 インボイス制度の目的は、適正な消費税の納税です。今までの消費税の制度では、消費税を納付する義務のない免税事業者が消費税を受け取ることにより、本来、国に納付されるべき消費税が国に納付されず免税事業者の手元に残る、いわゆる「益税」が発生していました。この益税が発生しないようにするための制度が、このインボイス制度なのです。

不動産オーナーへの影響


 前のページで述べたように、免税事業者に対して支払いをした場合、支払う事業者は、支払った消費税に含めることはできません。ここで問題となってくるのが、借主が消費税の課税事業者で、かつ、物件がテナントや駐車場など消費税の対象となる取引の場合です。この場合、借主の課税事業者は、インボイス制度の前であればテナント料や駐車場代を支払った消費税に含めて計算することができていましたが、インボイス制度導入後には、支払った消費税に含めて計算することができなくなります。そうなると、借主はインボイス制度前に比べて、納付する消費税が多くなってしまいます。
 この場合、借主である課税事業者としては、取り得る可能性は以下の4つあります。

4つの可能性


@納付する消費税が増えることを承知で従前どおりの賃料を支払う


 この選択がオーナーにとって、最もありがたい対応となります。オーナーは今まで通りの賃料を何の手続きの必要もなく受け取ることができます。ただし、この厳しい経済状況の中、事業者の負担が増加することを承知の上で、従前の賃料を支払う判断をするのは難しいかもしれません。



Aオーナーが免税事業者なのだから消費税相当額の値引を交渉する


 オーナーが免税事業者で消費税を納税する必要がなく、借主である事業者も消費税を払った処理ができないのだから、消費税相当額の値引き交渉が予想されます。インボイス制度は適正な消費税の納税が目的であり、消費税法の趣旨からいうと正しい形になりますが、免税事業者であるオーナーとしては、結果として収入が減少することになります。



Bオーナーに課税事業者になってもらう


 オーナーが課税事業者になれば、借主としては今までの賃料を支払い、消費税も今までと同じ処理をすることができるようになります。ただし、オーナーは課税事業者となりますので、消費税を申告・納税する義務が生じます。この場合、注意しなければならないのは、その物件の消費税のみ納めればいいというわけではなく、消費税が影響する取引に係るすべての消費税を納める必要があるということです。
 例えば、一般の入居者さんに課している駐車場代や、物件の屋根などに太陽光パネルを設置し、売電している場合の売電収入などに係る消費税も納税しなければなりません。また、この場合、課税事業者及び適格請求書発行事業者としての届出や登録申請など一定の手続きが必要となります。

C課税事業者であるオーナーが所有する物件に引っ越す


 賃料の支払は長期にわたるため、トータルの負担を考えると、同規模、同条件の物件が近くにある場合、課税事業者であるオーナーが所有する物件へ引っ越すという経営判断をする可能性もあります。


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 この4つの可能性をふまえ、課税事業者(適格請求書発行業者)となるか、免税事業者となるか、ご検討ください。ただし、インボイス制度は令和5年10月1日から導入され、10月1日からインボイスが発行できる適格請求書発行事業者となるためには、原則として令和5年3月31日までに一定の手続きを取る必要があります。


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監修:井上 直輝(井上直輝税理士事務所 代表) 松山市山越3丁目6-9 TEL:089-989-5228

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